先生
私が徐々に普通に接する様になり、みんなは多分吹っ切れたと思っているみたい。


これで良いんだ。


これ以上、心配はかけられないからね。


今日もまた、真咲先生と廊下ですれ違う。

以前なら目配せしていたのに、お互いに目を逸らし合う。

友達と会話してるのに、全然話なんか聞いて無くて完全に真咲先生に意識が行っちゃってるの。

でもそれを振り払う様に、ひときわ大きな声で笑った。


これで良いんだ。


すれ違う時、少し先生のタバコの匂いがして心が締め付けられた。

タバコの匂いだけなのに、先生との思い出が一瞬にして蘇る。



うさぎとパンダのマグカップ


クローバーのストラップ


イルカのストラップ


初めてのキス


ミルキー


寝顔






もっともっと沢山有るね。

顔は笑って居るのに、心の中は号泣していた。


もう少し……

もう少しだけ、時間を下さい。



そしたら、心から笑顔になれるから。


そしたら、完全に忘れるから……



私は拳を握りしめ、心の中で誓った。

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