せーしゅん。【短編集Ⅲ】
卒業式はもう始まっていて
僕たちは体育館裏のフェンスをよじ昇って
学校に侵入した。
古びたクリーム色の体育館から聴こえるのは
6年生が練習していた曲。
僕たちはまだこの曲の曲名は知らないけど
これが“卒業の証”というのは分かる。
僕たちは足元の長方形の窓から体育館の中を覗きこんだ。
みんな、口を大きくして歌っていた。
僕たちの学校は主に私服で授業を受けるので
制服を着ていた卒業生の姿が凛々しく思えた。
お兄さん、お姉さん。
それは小学生と中学生の分け目。
彼等はもう小学生じゃないんだ。
歌が終わり
校長先生が教壇に立って
卒業生一人一人に賞状みたいなものを渡し始めた。
「あー…こっからが退屈」
キヤが窓から顔を離し
その場にあぐらをかいた。
「DSでも持ってくりゃよかった」
退屈そうに頬杖を付くキヤの周りには
クローバーがたくさん咲いていた。
「ねぇ、四つ葉のクローバー探そうよ」
「えー」
キヤは乗り気じゃなさそうだ。