Love Step
眠っている杏梨を静かに助手席に乗せるとパチッと目が開いた。


「ゆきちゃん!?」


自分がなぜこの状況下にいるのか分からず瞬きを繰り返す。


あ……そうだ……。

岸谷君が近づいて来て気分が悪くなっちゃったんだ……。


「杏梨、大丈夫か?頭痛は良くなったか?」


頭痛……。

先生に言えなくて香澄ちゃんが言ってくれた嘘だ。


「う、うん」


「風邪の初期症状だって先生が言っていたよ これから病院へ行って見てもらおうな?」


「病院!?」


気分が悪くなったのは確かだけど風邪じゃない。


だが杏梨は発作を起こした事を言いたくなかった。


言えば雪哉に心配をかけてしまうからだ。


それともう一つ。


発作を起こした事を言えば近づいた2人の距離が離れてしまうと思った。


「早めに見てもらえばすぐに治るだろう?」


「い、いいよ 市販の薬を飲めば大丈夫だよ」


「本当か?」


疑り深い視線を投げかける。


「うん 休めば治るよ 仕事抜け出してきてくれたんでしょ?早く戻らないと」


杏梨は心配そうな雪哉に安心してもらおうとにっこり笑った。



< 126 / 613 >

この作品をシェア

pagetop