Love Step
期末考査も終わりまずまずの結果で杏梨はホッとした。


明日から学校に行かなくて済むと思うと嬉しい。


毎朝の雪哉の送り迎えが無くなり手間をかけさせないで済むからだ。


やっぱりクラスの男の子たちは苦手だった。

たぶん……事件の犯人が学生だったせい。

触れられても大丈夫なのはゆきちゃんと……あと一人……わたしをガキンチョって呼んだあの人は大丈夫だった。

明日からゆきちゃんのお店のお手伝い。

もう12時を過ぎているのにゆきちゃんはまだ帰ってこない。

わたしの知らない大人の世界。

早く大人になってゆきちゃんとおしゃれなバーに行きたいと思ってしまう。



* * * * * *



「杏梨ちゃん 大丈夫なの?」


オフィスで今日から働いて貰うと聞いてめぐみは驚いた。


杏梨が髪を短くした時から彼女の家に行きカットをしていたからだ。


あの頃は雪哉でも髪に触れることは出来なかった。


「はい めぐみさん よろしくお願いします」


明るくぺこっと頭を下げる杏梨は確かに変わっていた。


膝上の水色のシャツワンピースを着てウェストにはブルーの太目のベルトをしている。


かわいい洋服を着たから変わったわけではない。


いつもおどおどしていた少女から明るい雰囲気へと変わった。


3年前も可愛かったが今はあの頃よりもっと可愛くなっている。



「とりあえず、今日はめぐみの用事をやってもおうと思う」


雪哉がスケジュール帳を見てから顔を上げた。


「はい」


頷くと杏梨をもう一度見る。


「よろしくね 杏梨ちゃん」


2人がオフィスを出ようとした時雪哉が杏梨を呼んだ。



呼び止められた杏梨は立ち止まると振り返り顔を小さく傾けた。


「具合が悪くなったらここへくるんだ いいね?」


店のお客様は女性だけではないからだ。


「はいっ」


分かったと言うようににっこり笑うと出て行った。


ドアが閉まると雪哉はふぅとため息を吐いた。


「杏梨が心配で仕事どころじゃないかもな……」


ボソッと口に出た言葉に苦笑いを浮かべた。




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