Love Step

アルバイト

「店の手伝い?」


杏梨が店の手伝い?


雪哉は片方の眉を上げて杏梨を見つめた。


あれ?ゆきちゃん 喜んでくれていない……?


今は夕食の最中、今朝思いついた事を言ってみたのだ。


「雑用ぐらいなら出来ると思って」


喜んでくれるかと思ったのだが予想に反して良く思っていないようだ。


「ね?ダメ?」


怪しい雲行きに杏梨は雪哉の視線から逃れるようにポテトサラダを箸で突っつく。


「働く必要はないだろ?それとも何か欲しいものでもあるのかい?」


「ううん そうじゃないの ママからお小遣い貰っているし……」


生活費はゆきちゃんが出してくれているし……。

時々、ゆきちゃんもお小遣いをくれる。


「じゃあ、働く必要は――」


「お手伝いしたいのっ!」


雪哉の言葉をさえぎって杏梨は力強く言った。


「それに……ゆきちゃんの近くにいたい」


「杏梨……」


「迷惑はかけないから それにお金も要らない」


働くのにお金は要らないだって?本当に杏梨は世間知らずだな。


必死にお願いをする杏梨に了承するしかなかった。


思わずフッと笑みがこぼれる。


「ゆきちゃん?」


「……とりあえず、数日働いて大丈夫だったらお願いする事にしよう」


そう言ってから両親が渡米する前に「夏休みに遊びに来なさい」と言っていた事を思い出した。


「夏休みアメリカに行くんだろう?」


貴美香さんは杏梨が来るのを楽しみに待っているはずだ。もちろん親父も。


「ゆきちゃんは?」


ママ達には会いたいけど一人で行く勇気がない。


「俺は……」


頭の中で夏休みのスケジュールを思い出す。


「……せいぜい3日って所かな」


「じゃあ、今年は行かない」


杏梨はきっぱり言った。


「貴美香さんが寂しがるよ?」


「大丈夫だよ 春樹パパがいるもん」


会いたいのを我慢して杏梨はにっこり笑った。



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