Love Step
「どうしたの?ぼんやりして」

めぐみが叱ると言った感じではなく声をかける。


「あ、いいえ すみません」

慌てて手を動かす。


「杏梨ちゃん、雪哉さんと彩さんが載っている雑誌、もう見た?」

胸に抱えていたファッション雑誌の表紙を見せる。


「え?いいえ 見ていないです……」


ゆきちゃんと彩さん……?


その雑誌は先月杏梨が気になって雪哉のオフィスで読んだ最新号だ。


「じゃあ、見せてあげる すっごく良い雰囲気なのよ?」

そう言って付箋の貼られていたページを開いて杏梨に差し出す。


開かれたページを見た瞬間、胸がツキンと痛んだ。


彩の髪にブラシを当てて鏡越しに2人が微笑み合っている写真だ。


いやだ……。


仕事だと分かっていても酷い嫉妬をしてしまう。


「杏梨ちゃん、どうかした?」

黙り込んでしまった杏梨にめぐみは覗き込むようにして聞く。


「いいえ、なんでもないです」


「ね?素敵でしょう?ほんとお似合いのカップルよね」

雑誌を受け取りながらうっとりとした表情になる。


「あ、あの……」


ゆきちゃんはわたしの彼氏……。


「ん?どうかした?」


「……ゆきちゃんと彩さんは付き合っているんですか?」

そんなはずはないと思いながらも聞いていた。


「あたしにはそう見えるけど」

めぐみの答えに杏梨はガクッと肩を下げた。



「めぐみさん!」

めぐみがスタッフに呼ばれた。


「あ、いけない!杏梨ちゃん、ここが終わったら雑誌の片づけをお願いね」

足早に去る時、指示をしていなくなった。


ゆきちゃん、わたしと峻くんに嫉妬しているって言ったよね……。

わたしの方が何十倍、何百倍もゆきちゃんと彩さんに嫉妬している……。



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