Love Step

デート

「杏梨ちゃん、このロッド分けて引き出しにしまっておいてくれる?」


昨日の仕事振りで任せられる子だと分かり、今日は更に色々な仕事をしてもらっている。


「はい めぐみさん」


杏梨は元気良く返事をすると早速、大量のロッドをサイズ別に仕分け始めた。


今日の服はゆずるが買ってくれたレモンイエローのブラウスと白の綿素材の膝上スカートといったごく普通のスタイル。


杏梨に良く似合っている。


男の子の格好をしていた数週間前の頃が思い出せないほどだ。




「杏梨」


仕分けたロッドを引き出しに片付けていると背後で雪哉が呼んだ。


「ゆきちゃん」


振り返ると朝のジーンズ姿と白いシャツ姿ではなくなり、濃紺のサマースーツ姿の雪哉が立っていた。


「どこかへ行くの?」


「テレビ局に行った後、雑誌社のパーティーへ顔を出してくるよ 何時に帰れるか分からないから夕食はいらないから」


「うん、分かった いってらっしゃい」


雪哉ににっこり笑って送り出す。


雪哉の姿が見えなくなると杏梨の瞳が陰る。


行っちゃった……。


一緒に夕食を食べられないと思うと寂しくなる。


気を取り直して片づけをしているとポケットの携帯電話が振動した。


着信を見ると「峻」の文字。


辺りをキョロキョロと見回してから小さな声で出た。


「はい?」


『わりぃ バイト中?』


「そうだけど……?」


『何時に終わる?』


「6時だけど……」


『デートしようぜ』


上機嫌な峻の声がする。


「……嫌です」


『俺の事、知る努力してくれるって言ったじゃん』


「言ってないし」


『デートしようぜ』


「……」


『予定何もないんだろ?店の外で待っているからな』


強引に言い電話が切れた。


「もうっ!行くって言ってないのに……」


どーしよう……。



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