Love Step

強がり

部屋に戻った杏梨はぐったりとベッドの端に座った。


とっさに峻くんに言っちゃった……。

でもわたしはゆきちゃんが好きなんだから峻くんと出かけちゃいけない。

はっきり言う事が出来て良かったと思う。

峻くんはもてるからわたしの事はもうなんとも思っていないはず。


「はぁ~」


峻くんではわたしの心はときめかないの……。



* * * * * *



六本木のいつも行くクラブに着いた峻は入り口で声をかけられた。


「やっぱり三木さんだぁ~」


同じ事務所のモデル、宮内 梨沙(みやうち りさ)が後ろに立っていた。


スレンダーなスタイルですらっと背が高い。


峻より遅く事務所に入りまだ売れっ子ではないが、事務所も期待している女の子だった。


「宮内……」


「三木さんおひとりなんですかぁ~?」


やたらと語尾を長くする女の子だ。


「あぁ……」


そう言ってひとりでクラブの中へ入ろうとするとグイッと腕を掴まれた。


「あたしも一人なんですぅ ご一緒してもらえませんかぁ?」


2人きりで会うのは初めてだが、峻も1人ではいたくない気分だった。


腕を組まれたまま峻は歩き始めた。


「ありがとうございますっ!すっごくうれしい!」


隣に並ぶ梨沙はニコニコと笑顔を振りまきながら付いて行った。



* * * * * *



お風呂から出た杏梨はやる事もなくリビングで雪哉の帰りを待っていた。


ゆきちゃん、まだかな……。


不意に雪哉が女性と会っているのではないかと頭をよぎる。


だめだめっ!疑っちゃダメなんだからっ!


大きくかぶり振ると冷蔵庫から500mlのミネラルウォーターのペットボトルを持ってくると、いつ帰ってくるかわからない雪哉を杏梨は待った。


時計の針が翌日に変わった時、雪哉は帰ってきた。


「ただいま まだ寝ていなかったんだ」


ソファーの上で膝を抱えて座っている杏梨を見てネクタイを外しながら近づいてくる。



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