Love Step
「ゆ、ゆきちゃん……言うから離れて……」


そう言ったものの瞳はゆきちゃんの唇に釘付けだ。


「OK」


ちゅっと音をたてて杏梨の唇にキスして離れる。


「さあ、話して?」


ソファーの背もたれにかかっていたTシャツを素早く着て言う。


「う、うん……」


杏梨は一呼吸置いた。


「今日……峻くんとラーメンを食べに行ったの」



ラーメン?色気がないな。



杏梨の真剣な顔を見て笑いそうになるが堪える。


峻君が杏梨を気に入ったのは分かっていたが……。

さすがに行動が早いな。


雪哉が黙ってしまったのを見て杏梨は息苦しさを感じた。


「ゆきちゃん、怒っちゃった?……でももう峻くんとは会わないから」


雪哉の方に身を乗り出し茶色の瞳をじっと見つめる。


ぎゅっと握った掌(てのひら)が汗ばんでくる。




「……彼にそう言ったの?」


やっと言葉を発してくれて杏梨は安堵して頷いた。


「帰りのタクシーの中で言ったの わたしはゆきちゃんが好きだからって」


「はっきり断ってくれて嬉しいよ」


雪哉は杏梨の身体を抱きしめた。


「それで俺の過去の女性関係って?」


抱きしめられたまま耳元で囁かれる。


「それは……」


「峻君から聞いたの?」


「……うん」



俺の女性関係……。

思わずうなだれそうになる。

余計な事を峻君は言ってくれる。


「言ったよね?いい年の大人だから女性と付き合った事もあるけど、ずっと心にいたのは杏梨だよ」


杏梨が大人になるのを待っていた。


膝の上に杏梨を乗せて柔らかい髪をゆっくりと梳く。


「うん 浅川 美咲さんの事を聞いて不安になっちゃったの……」




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