Love Step
「ごめんね 邪魔しちゃったかな……」


夕食の時は明るかったが、今は不安そうに見えた。


雪哉は杏梨の首の下に腕を滑らせ、片方の手で華奢な腰を抱きしめる。


「邪魔じゃないよ」


微笑み、額に口づけを落とす。


額に雪哉の唇が触れると、杏梨の心臓はトクンと高鳴った。



いつもの爽やかなコロンの香りがふんわりと漂い、杏梨の心臓はしだいに暴れ始めた。


もっと触れて欲しい。

額にキスだけじゃ……嫌だ……。


杏梨は自ら顔を寄せて雪哉の喉元に唇を押し付けた。



「杏梨?」


初めての大胆な好意に雪哉は驚いた。


「……ゆきちゃん……もっとキスして……」


潤んだ黒目がちの瞳が雪哉を誘う。


雪哉はためらった。


「ゆきちゃん……?」


杏梨の瞳に不安の色が広がる。


雪哉はそんな杏梨の唇に触れるだけのキスを落とす。


「……そんなんじゃ……いやだ……」


頬を赤らめて言う杏梨。


「杏梨……」


雪哉はため息を吐きたいのを堪えた。


キスをしたい、その先に進みたいのはやまやまだ。


男として大好きな女の子にそんな言葉を言われたら、ところかまわずキスをしてしまうだろう。


愛している杏梨を前にして雪哉が積極的になれないのは理由がある。


先日、父親から言われた言葉。


『杏梨ちゃんが男性恐怖症を少しずつ克服してくれているのはうれしい だが、まだ高校生だ 高校を卒業するまではどんなに愛していても身体の関係はもたないでくれないか?』


俺の気持ちは昔から父さんは知っていた。

10歳も年下の杏梨。

まだ男女のことなど何も知らない赤子同然。

今まで待ったのだから杏梨が高校を卒業するまで待てるはず……。



「ゆきちゃん……もっとキスして……」


震える小さな手で俺の身体にギュッと抱き付いた。




< 178 / 613 >

この作品をシェア

pagetop