Love Step

さぐり

峻はモデル事務所へ車で向かっていた。


事務所の入っているビルまではあと1キロほど。


赤信号でブレーキを踏むと、窓の外に自然と目が行った。


「梨沙」


サングラスを通してうつむき加減で歩く梨沙を見つけた。


真っ赤なチューブトップにスリムなジーンズ姿で元気な印象を受けるが、表情は暗く見えた。


信号が青に変わり、車を発進させたがすぐにハザードを点けて道路の端に停めた。


携帯電話をポケットから出して、今まで一度もかけた事のない梨沙の番号を押した。


『はい?』


知らない番号に怪訝そうな梨沙の声がした。



「梨沙?俺、峻だけど」


『峻くん!?』


「今、何しているの?」


『え……事務所の帰りで……』


「これから予定はない?」


『う、うん』


「俺、これから事務所で打ち合わせなんだ 梨沙、今駅に向かっているだろ?車から見かけたんだ 1時間位で終わるからどこかで待っててくれない?」


『あたしと……会いたいんですかぁ……?』


梨沙はあれから音沙汰の無い峻をあきらめようとしていた。


「え?まあ……話もあるから」


『分かりましたぁ……駅前の、コーヒーショップで待っていますね』


「OK」



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