Love Step
「ゆきちゃん……」


目の前に整った顔を見て瞬きを数回。



「おはよう」


爽やかな笑顔。


杏梨は少し雪哉から離れた。



え……っと……昨日は……。


思い出そうとして眉がハの字になる。


「眉間に皺が寄っている」


その場所に指が触れられる。


「あ……先に寝ちゃったんだ」


「そう、高いびきをかいて寝ていたよ」


「え……え……?た、高いびきっ?」


雪哉の言葉を信じた杏梨は両手を口に持って行き焦った表情に変わる。


「冗談だよ、死んだようにぐっすり眠っていたよ」


クスッと笑った雪哉は杏梨を引き寄せる。


不意をつかれて杏梨は雪哉の胸に倒れこむ。


「わわわっ……」


そして頬にキスを落とされる。


「もうっ!高いびきって……慌てちゃったんだからっ」


「ごめんな 杏梨をからかうと面白いから」


尖らせた唇に啄ばむようなキスをする。


「……それに、おいしい」


おいしいだなんて言われて恥ずかしくなる。


「ぅ……スケベっぽい言い方……」


わたしが照れを隠すように言うと、ゆきちゃんはきれいな顔に不敵な笑みを浮かべた。



「もちろん、スケベの弁解はないよ」


そう言うと再びわたしの唇は塞がれた。


優しく、角度を変えて何度も……。


そのキスにわたしはなぜだか切なくなった。


その理由は……唇以外は触れないから。


ごめんね……ゆきちゃん……。

もう少し触れ合う事になれれば……。

ちゃんと向き合えるようになるからね。




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