Love Step

あきらめ

「どうして貴方がここにいるの!?」



彩にとって一番見たくない顔を見て金切り声を上げた。



「姉貴っ!」



「す、すみません……」



杏梨は頭を下げるしかなかった。



ここから逃げ出したかった。



だが、出て行きたくてもドアの前には彩がいる。



杏梨の身体はこわばり、足は床に根が生えたように動かなかった。



「峻に何の用なのよ!雪哉さんだけじゃ物足りないって言うの!?」



「姉貴っ!何を言っているんだよ!」


見かねた峻は杏梨と彩の間に入る。



「家に帰ってまで貴方の顔なんて見たくなかったわ 自分の家でも私はくつろげないの?」



「雪哉さんが迎えに来るんだよ だからもう何も言うなよ」



「雪哉さんがここに来るの?」



雪哉の名前を聞いて、数時間前の会話を思い出してしまった。



どこで知ったのかは分からないけれど、今回の事はすべて彼にばれてしまった。



怒鳴られるかと思ったが、雪哉さんは「こんな俺の為にすまない けれど君の気持ちには答えられない」と言って出て行った。



怒るなら怒れば良いのに……雪哉さんの瞳は私を哀れんでいる様だった。



1人っきりになった私は涙が枯れるまで泣いた。



また涙が出そうだ。



あんなに泣いたのに……。



彩は泣かないようにぎゅっと唇を噛んだ。



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