Love Step

「ああ……前から話はあったんだがね、まさかこんなに早くなるとは思わなかったよ……」



「おめでとう♪すごいわ!」



貴美香が手を叩いて喜ぶ。



「春樹パパ、おめでとうございます」



「ありがとう 貴美香、だけどすぐに戻らなくてはならないんだ」



昇進は喜ばしい事なのだが、責任が重くなる分、日本に長くいるわけにはいかない。



「あら……」



「1人で戻るから君は杏梨ちゃんに付いていてあげるといい」



「春樹パパっ!いいよ ママと一緒に帰って!」




「どうかした?騒がしいね?」




3人とも雪哉が帰ってきたことに気づかなかった。



「雪哉くん、お帰りなさい」



貴美香が立ち上がった。



「ただいま戻りました」



すでにオフホワイトのジャケットは脱いで手にかけられている。



「ゆきちゃん、春樹パパ 支社長さんになったの」



「おめでとう 父さん」



「そのせいですぐに帰らなくてはならなくなったんだ」



「仕方ないですね」



あっさりとした答えだ。



「雪哉くん、私も一緒に帰るから杏梨の事頼めるかしら?」



「ええ、もちろんです」



親たちと行く温泉旅行は少し照れがあった。



それに2人がいては杏梨に触れることも出来ず、かなりの忍耐力が必要になると思われた。



「貴美香、君は残って――」



「嫌です 私は貴方と一緒に帰るわ」



「貴美香」



「杏梨のことなら心配ないわ 雪哉君がいるんですもの」



同意を求めるように貴美香が雪哉に微笑んだ。



雪哉は小さく吐息を吐くと父親と貴美香を見た。



「お2人に話があります」


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