Love Step
病院で杏梨は目を覚ました。


「あぁ 気がつきましたね 一応、脳のMRIと身体のCTを撮りますから」


目の前にいた医師は女性だった。


「だ、大丈夫です」


「あなた、バイクで転倒したんでしょ?しっかり検査をしないといけないわ 今痛くないからって放っておいてはだめよ」


女医は杏梨をたしなめる。


「ご両親に連絡したいんだけど、電話番号を教えて」


カルテに何かを書き込みながら聞かれる。


「か、海外にいるんです」


「まあ、あなたは1人暮らしなの?」


「え……はい……あ……いいえ 兄と……」



ゆきちゃんには連絡して欲しくなかった。



昨晩、遅くなる連絡をくれなかった事がどうしてもひっかかり杏梨の心を硬くしていた。



「じゃあ、お兄さんの番号を教えて?」


「忘れました」


そう言った途端、女医の今までにこやかだった女医の顔がきつくなる。



「あなた!ばかにしないでよね?忙しいんだから早く教えなさい」


杏梨は仕方なく学校名と担任を教えた。





しかし病院へ現れたのは雪哉だった。


検査結果を待つ間、杏梨は病室のベッドに寝かされていた。



ドアが開く音と共に「杏梨!」と言う焦った雪哉の声。


ちょうど、ウトウトしていた所だったがゆきちゃんの声で目を開けた。


「……ゆきちゃん」


「杏梨、大丈夫か?ケガは?」


酷く心配そうな顔だ。



「う、うん たいした事ないから」


その時、ドアがノックされて先ほどの女医と看護師が入って来た。


ベッドの側に立っている雪哉を見て驚いた顔になる。


「あなたは?」


顔を見てすぐにカリスマ美容師だと分かったが、彼が彼女の兄なのか、彼氏なのか、そういう意味で聞いていた。


「あ、兄です」


杏梨が答えると女医はにっこり笑顔になった。






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