Love Step

事実

「……ショックを受けないで欲しい それが怖くて言い出せなかったんだ」



しばらくの沈黙の後、雪哉は決心した。



杏梨の身に何か起こってからでは遅いんだ。


酷なようだけど、今のうちに警戒心を持ってもらわないければ……。



雪哉の言葉が以外だったようで驚いた顔で見ている。



「ショックを受けるって……?どうして……?」



雪哉は立ち上がるとソファーを移動して杏梨の隣に座った。



自由になる左手を両手で囲む。



「ゆきちゃん……?」



どうしてゆきちゃんはこんなに辛い顔をしているの?



雪哉の言葉に戸惑う杏梨だった。



「……彼女はあの事件の姉なんだ」



「あの事件……って……!!!!」



最初は分からなかったが、すぐに雪哉の言う事件を把握した。



杏梨は雪哉の手から左手を抜くと口元に持っていく。



「落ち着くんだ」



一気に顔が青ざめてガタガタ震えだす。



雪哉は杏梨の後頭部に手を置くと引き寄せ抱きしめた。



「落ち着いて」



「……っ!……ど……どう……して……?」



琴美さんがあの男のお姉さん?



髪を大きな手でゆっくり撫でられ落ち着かせようとしてくれているが頭の中が、パニック状態で今にも叫びだしたい。



「そんな……」



あんなに優しくしてくれたのに……琴美さんが……お姉さん……?



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