Love Step
トントン



部屋のドアがノックされて開いた。



「また泣いているのかい」



携帯電話を持ちながらしゃくりあげている杏梨を見て雪哉は胸が痛んだ。



「電話の相手は?」



「か、香澄……ちゃん」



ベッドに近づき杏梨の手から携帯電話を取り上げた。



「香澄ちゃん、話し相手になってくれてありがとう 悪いけど電話を切らせてもらうね」



『あ、はい』



雪哉は電話を切ると携帯電話を机の上に置き、ベッドの上に腰をかける。



「何も心配しなくて良いから 学校には不甲斐ないが、父親に事情を説明してもらうから大丈夫だと思う」



杏梨は大きくかぶりを振った。



「学校のことなんてどうでも良いの」



「良くないよ ちゃんと卒業するべきだ」



「でも……ゆきちゃんがわたしをもらってくれるんでしょう?」



杏梨はピンクのクッションを離し、雪哉に抱き付いた。



「杏梨……」



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