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わたしの気持ち

ドアを静かに閉め、振り返るとゆずるが立っていた。



「杏梨ちゃん、どう？」



「泣きつかれて眠った」



泣き疲れて眠るとはまるで小さな子供のようだが、まさにそんな感じで泣きながら雪哉の腕の中で眠ってしまったのだ。



「可愛そうに……」



杏梨を気の毒に思い、ゆずるが小さく呟く。



「これから父さんに電話するよ」



声を落として話しながらリビングへ向かう。



「そうね」



＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊



琴美は朝から騒がしいスタッフを横目に自分の城へと向かった。



どうしてみんな騒いでいるのかしら？



気にはなったが、サロンに入るとさっさと準備を始めた。



予約を確かめていると、ポケットの携帯電話が振動した。



メールを確かめると、あきらだった。



『お前の店の雪哉って男が週刊誌をにぎわせているぞ？』



オーナーが週刊誌をにぎわせている？



琴美は携帯電話を片手に小首をかしげた。



そういえば店のスタッフが週刊誌を手にしていたような……。



どうしてなのかはすぐにわかった。



ネイルサロンの方にも週刊誌の事について電話が殺到し、めぐみが説明に来たからだ。



その日、スタッフたちは何を聞かれても事情は知らないと答えるように指示が出た。



＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊



美咲の話で世間を騒がせたが、すぐにおさまると思っていた。



杏梨の学校には雪哉の父親と杏梨の母親が説明をして問題にされずに済んだ。



学校では雪哉が杏梨の婚約者だという事はほとんど知られていないから気にせずに学校へ行けた。



未成年の杏梨が週刊誌に狙われるという心配はないと雪哉やゆずるは安心していた。



しかし、週刊誌の酷い記事はまだ続いた。



まるで雪哉が女好きの好色な男のように取りざたされたのだ。



週刊誌を読んで杏梨は憤りを感じた。



「こんなのっ！ひどすぎるっ！」



持っていた週刊誌を壁に投げつけた。



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