Ｌｏｖｅ　Ｓｔｅｐ
「考えて欲しいの　彼をバッシングする記事を信じる読者に貴方の話を載せたいの　貴方の気持ちを」



わたしの気持ち……？



「杏梨、無視しなよ　記者なんてみんな同じだよ　人をおとしいれる記事しか書かないよ！」



香澄は強引に杏梨を引っ張った。



杏梨は名刺を握ったまま香澄に引っ張られるまま歩いた。



「あんなの気にしちゃだめだよ？」



急ぎ足で歩きながら香澄が言う。



「う、うん……」





香澄はしっかりマンションの前まで送り帰って行った。



部屋に入った杏梨は持っていた名刺を見る。



ずっと握っていたから折れ曲がっていた。



「わたしの気持ち……」



ゆきちゃんを非難する人は許さない。そんな気持ちだ。



記事の内容にもかかわらず、雪哉の店は普段と変わらないようだ。



むしろ、そんな男を見てみたいとはじめての客からの予約もかなり多くなっていると言う。



雪哉の予約は数ヵ月後でないと取れないのだが。



私たちの事を話したらゆきちゃんの見方が変わるのかな……。



考え事をしていると外が暗くなった事に気づいた。



「いけないっ！ゆきちゃんが帰ってきちゃう」



時計を見ると７時だ。



雪哉が帰って来るまで１時間以上ある。



雪哉を元気付けたいから好きな物を作ろうと決めていたのだ。



杏梨の前ではそんな顔は見せてはいないのだが。




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