Love Step
* * * * * *



「今日も送って行ってあげる」



放課後、帰る仕度をしていた杏梨に香澄が近づいてきて言う。



数日間、香澄は杏梨を心配して一緒に帰ってくれていたのだ。



「もう1人で大丈夫だよ」



記者が近づいてくる様子はなかった。



「あたしの事なら気にしなくて良いんだよ?別に用もないし」



最近、杏梨は思い悩んでいるように見える。



雪哉さんのことがあるから悩まない方がおかしいけれど。



あまり笑顔を見せなくなった杏梨が心配だった。



「香澄ちゃん……」



「いいからっ、一緒に帰ろう♪」



* * * * *



「君、杏梨ちゃんだよね?」



駅の改札を出るとサラリーマン風の男性と紺色のスーツを着た女性に声をかけられた。



「違います」



杏梨の隣にいた香澄がぶっきらぼうに言う。



「君じゃないよ 隣の子」



グレーのスーツ姿でノンフレームのメガネをかけている男が言う。



「だから違うって言ってるんです!行こう」



香澄は頬を膨らませ、杏梨の腕を掴んだ。



「杏梨ちゃんに話が聞きたいの」



今まで黙っていた男性より少し年上に見える女性が言った。



そして名刺入れから一枚名刺を取り出し杏梨の手に持たせる。



< 555 / 613 >

この作品をシェア

pagetop