Love Step
「杏梨、俺に任せてくれるかい?」


自分の頭ではわからない杏梨は素直に頷いた。


ゆきちゃんに任せれば安心なのは分かっている。


雪哉は目を細め、自分に任せてくれたことに感激していた。


男性恐怖症の杏梨が少し治ってくれたように思えた。


やはりこの心境の変化は恋なのだろうか……。


帽子を取るとクルクルの髪が鏡に映った。


それを見た途端に泣きそうな顔になる。


「大丈夫だよ」


「……」


すごく後悔している杏梨を見て雪哉は思いついた。



「そうだ、杏梨 出来上がるまで見ないことにしないか?」


「……見ないこと?」


「そう、鏡に布をかけて見えなくしよう」


「ゆきちゃん……うん……こんな自分を見るのは嫌……」


杏梨の同意を得て雪哉は隣の部屋から大きな白い布を持ってくると鏡に被せた。


これで杏梨の姿が見えなくなった。


「ちょっと待ってて」


雪哉が再び出て行き、戻ってくると雑誌を数冊手にしていた。


「これでも読んでいて かなり時間がかかるから」


渡されたのはファッション雑誌。


今までの杏梨とは縁のないものだった。


杏梨は受け取ってパラパラめくり始めた。


めくっていくうちに可愛いモデルさんを見つけた。


この人の髪型すてきだな。


ページの下の方に雪哉の名前を見つけた。


本名は冬木 雪哉なのだがヘアーアーティストの時は雪哉で通っている。芸名みたいなものだ。


すごいな~ ゆきちゃん


何気なくページをめくっていると三木 彩の特集記事が載っていた。


彼女はモデル出身の女優だ。


女子高生に絶大な人気がある。


やっぱりきれいな人だな……あれ……?


写真には彩ともう一人男性が写っている。


仲良さそうにオープンカフェのテーブルで隣り合って座っているのは杏梨に泥水をかけた張本人。





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