To Heart


アパートの自転車置き場に自転車を停めていると、なにか白い物が落ちてきた。

空を見上げると、チラチラと小さい粒の雪が舞い始めていた。

『ホワイトクリスマスになるかなって思ってたのに』

彼女の言葉が頭をかすめる。

彼女は今頃きっと彼女の部屋で、この雪を嬉しそうに眺めているのだろう。

彼と一緒に……

彼女と一緒にいた夢のような数十分間を、必死に思い出そうとしても、頭に浮かぶのは、彼の前で見せたあの無邪気な笑顔ばかり。

こんな思いをするなら、彼女を好きにならなければよかった……

「今更遅いよ……」

ため息をつきながら、空に向かって思わず呟いた。


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