To Heart
「会えてよかった。ずっと川口くんに会いに行かなきゃと思っていたの」

彼女はまっすぐに僕を見つめてそう言った。

「な、なんで……ですか」

まだ気持ちが高ぶって上手く言葉が出ない中、かろうじて僕はそう聞き返した。

「あの時はごめんね。あの後すぐ店も辞めちゃったし、ちゃんとお礼も言えなくて。あんな変なところ見せちゃって、心配させちゃったかな……って」

申し訳なさそうに、彼女が言う。

「も、もう大丈夫ですか?」

「うん。おかげさまで」

笑顔でそう言った彼女は、なにかが吹っ切れたような清々しい顔をしていた。
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