To Heart
「引越ですか?」

「あ、うん」

「もしかして、彼氏さんと?」

彼女の表情から、僕はこの引越が彼女にとって前向きな物だと思った。

僕の問いに彼女は一瞬言葉を詰まらせたが、

「うん」

と、恥ずかしいのか少し俯き加減で答えた。

その言葉は僕にとって少し悲しい物ではあったが、彼女が幸せならそれが一番いいのだと、自分に言い聞かせた。

彼女はこれから幸せになるのだ。

「よかったですね!」

笑って見送ってあげないと……

僕の言葉に彼女は、微かに目を潤ませながら声もなく頷いた。
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