To Heart


外が徐々に暗くなり店の客足も落ち着いた頃、オーナーに言われて外に出ている黒板を夜のメニューに書き換えながら、僕の妄想は果てしなく膨らんでいた。

『凄く良くなったよ!』

彼女の言葉が、頭の中で何度もリピートされ、ついには

『啓太くん。大好きよ』

なんて言葉を言ってもらう事を想像したりして、思わずニヤケてしまう始末。

いつかなにかかが間違って、そんな事になれたら……

などと、考えただけで胸が高鳴ってしまう。

そんなことに想いを巡らせながら、気も漫(そぞ)ろに書かれた文字は、激しく乱れていた。

あり得ないほどミミズのようになった文字を焦って消し、もう一度落ち着いて書き直していると、爽やかな香水の匂いが鼻をくすぐった。
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