忘れられない人
「すいません、遅くなっちゃって〜。」

「用は済んだのか?」

「はい、すっかり。すみませーん、カシスオレンジひとつ!」

みちるは大声で店員に注文すると、私の隣りに腰を下ろした。

「で、二人で何の話してたんですかぁ?」

「いや、たわいもない話。あとは羽田の悪口だよな。」

凌にふられ、

「そうそう。みちるのどじっぷりをね、話してたんだー。」

「うわ、ひどっ。藤咲先輩、ドSですもんね。私、高校時代、どんだけスパルタされたかっっっ!」

「そだっけ?愛情愛情!おかげで泳ぐの早くなったろ?」

「なりましたけど・・・。平気でビーサンとかで、ぶたれてましたよね、私。」

「そりゃ湊だろぉ〜。オレは優しくて有名な藤咲先輩だぞ。そのオレがやったなんて、まさかな。なぁ、羽田、違うよな。」

そう言うと凌は、拳でみちるの頭をぐりぐりっとこづいた。

「いたっ・・・。はい、そうです。藤咲先輩じゃ、なかったです。」

「だろ?よろしい。」

そして、にや〜っと満面の笑みを浮かべる。

そんな凌の姿がめっちゃかわいくて、私はにこにこしながら二人のやりとりを見ていた。
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