名残の雪

わたしたちが付き合い始めたのは去年の秋。

学校祭に遊びに来ていた彼とぶつかった拍子に、彼が持っていたコーヒーがわたしにかぶった。


…よくある話。


『ごめん!大丈夫!?』

『ちょっとだけだから、大丈夫です』

と、答えるわたしの制服はコーヒーの匂いが染み込んでいる。


大丈夫だと言っているのに、なんとかしようと真剣で。近くにいる生徒にハンカチやタオルを持っていないかと聞きまわる。


『クリーニング代!』

お尻のポケットから取り出した使い込んでいる財布から、千円札を数枚抜き取りわたしの手の中に握らせた。
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