君だけのもの
電話を切って、陽奈を見た。
不思議そうに俺を見てる。
「ごめんね?仕事入っちゃった…。」
本当はごめんなんて思ってねぇけど…形だけ、な?
「そうなんだ。頑張ってね。」
陽奈も俺の演技に付き合って、みんなの前では、カップルをやってくれてるみたい。
「じゃあ、俺行くな?」
「うん。いってらっしゃい!!」
俺は、手なんか振っちゃったりなんかして教室を出た。
学校の外に出ると、いつもの車が。
「ありがと、樹。」
俺は車に乗りながら、運転席で携帯をいじってる樹に言った。
「別に。せっかくの甘い時間を邪魔されたぐらいでキレたりしないから。」
…あー相当キレてらっしゃる。
樹は喜怒哀楽を表情に出さない。
「ごめんって!!麗華(れいか)ちゃんと一緒だったんだ?」
麗華ちゃんは、樹の彼女で、もう5年も付き合ってる。
兄の優馬とは大違い。
なんで兄弟でここまで違うのやら…。