花かがり 【短編集】

◇ 薊 ―アザミ―

【アザミ】


ある日の夜、唯子は夢を見た。

夢の中で寝ている唯子を、顔の無い男が襲いかかる。

唯子は抵抗したくても、夢の中では無抵抗だ。

無抵抗をイイことに、顔の無い男は唯子を襲い続けた。


恐怖で声も出ない、唯子。



「また、来るからな」
そう言って、男は消えた。



苦しみから解放された唯子は、夢から目覚める。


「ゆめ…?か…」
夢だったコトに、唯子はホッとする。
そして、自分自身を抱き締めた。
自分を抱き締める手が、直に肌の温もりを感じる。


「えっ…?」






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