そして俺らは走り出す
別に、バスケは音を立てないほうが有利になるスポーツではない。


「あっ」


今だって、ボールが相手の手に渡ってしまった。


いや、練習量の問題もあるのかもしれないが。



それでもアイツはまた、懸命にボールを追いかけ始める。

音を立てずに。




もう一度、アイツの手にボールが渡り
今度は上手く相手を交わして、シュートを決める。


女バスには特別人気のある人がいるわけではなく、俺達とは違って全然ギャラリーがいない。

アイツの顔立ちだって、客観的に見たらいたって普通。


でも、俺には全部が可愛く思えてしまう。


他の人より長めの睫毛

他の人より少しだけ大きめの目

他の人より小さめの背


十人並みの顔立ちなのに
いろんな全てが愛おしく思えてしまう。






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