そして俺らは走り出す
本当の姿
───部活後



もしかしたらアイツも一緒ではないか、と
思った俺の勘は当たっていて。


集合場所の自転車置き場に、メンバーの後ろに隠れるようにして桜音はやって来た。



「男子早いねぇ」


とっくに準備が終わってる俺達を見て、梨沙は苦笑しながら言う。


「女子がおっせえんだよ」

と俺が言うと梨沙は「ま、いーや」といって
健の自転車の後ろに跨る。


「え?
何、この展開」

乗られた健も予想していなかったようで、スゴイ驚いている。


「女子は自転車持ちが少ないの!

だから男子は女子を後ろに乗っけてく事! 以上!!」



えぇぇええ!!

以上って。


「おい、ちょっと待て…――」


「待たない!

そーだ! ペアは身長的理由でもう決めてあるから」


「はぁ?」


「だってもし自分より背の低い男子だったら不安でしょ?」


背の低い男子って俺のことかよ。

悪かったな。


「そんなんで皆納得したのかよ」


「あらなーに。
あんたのペアに不満でもあるの?」

「俺のペアァ?

誰だよ」


だいたい女バスに俺より背低い奴なんて居たっけ。


「ほら、後ろ」


梨沙が指差す方を振り向くと


心臓がドクンとなった。



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