そして俺らは走り出す
「ダメ」


「……え」


「ダメ。
歩かせてやんない」


一瞬桜音の可愛いさに負けそうになるが、それでも俺は自分の意見を曲げない。


「ひ、紘嵩君?

わたしの話し聞いてた?」

その言葉に俺は即効で頷く。


好きな奴の話を聞かない訳がない。


だが、だったら…と続きかけた桜音の言葉を遮り、俺は真剣に話す。



「病気だろうと病気じゃなかろうと、お前は一度貧血を起こして倒れてんの。

分かってるか?


だから、俺はお前を歩かせないし
お前もこれ以上歩くな。

ただでさえ部活やった後なんだ。

ちょっとは休憩しろ」



その言葉に何も言えなくなったようで。




「…紘嵩君って、実は頑固」


しぶしぶ後ろに座った桜音がポツリと呟く。

勿論俺は聞こえないフリ。


しっかり掴まったのを確認して、俺は自転車をこぎ始めた。



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