ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

イケナイと思いながら
一瞬だけ聖斗を見てしまった。


視線が絡み合った瞬間
私は目を逸らし
何事もなかった様に
軽く頭を下げる。


私を好きだと言ってくれてた頃の聖斗と
何も変わって無い


「美羅…」


聖斗の小さな声が耳に入ったけど
私は聞こえなかった振りをして
聖斗の横を通り過ぎた。


「伯母さん…」


ベットに駆け寄り
伯母さんの顔を覗き込む。


「あぁ…美羅ちゃん
美羅ちゃんなのね?
帰って来てくれたのね」


消え入りそうな声で、そう言うと
私の手をしっかりと握りしめる。


「ごめんね。ごめんね。
心配かけて…ごめんね」


青白い手を握り返すと
伯母さんは安心した様に頷いた。


「もう、どこへも行かないって
約束して…」


あ…


「美羅ちゃん?」

「う、うん」


今は、そう言うしかない。


すると、黙って私を見つめていた京子さんに腕を掴まれた。
「美羅、ちょっと来なさい」
と、病室から連れ出される。


人気もまばらな病院の喫茶コーナー
小さなテーブルを挟み
訝しげに私を見据える
京子さんの鋭い瞳


「京子さん…ごめなんさい」

「美羅、どういうことか説明しなさい。
あんたが家出したのは
私のとこから帰った日だってね。

美津子も何も言ってこないから
何も知らなかったんだよ。

昨日、優斗から電話もらって
初めて美羅のことも
聖斗の結婚のことも聞いたの

あんたたち
好き合ってたんじゃないの?
一体、何があったの?」


困惑した表情の京子さん。


そうだよね…
あんなに喜び勇んで帰ったんだもんね。
こんなことになってるなんて
想像も出来ないよね。


「京子さん…聖斗と私は
運命の相手じゃなかったってことだよ…」






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