ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

ドールハウスを持って立ち上がった聖斗が
私を見下ろし
「兄貴なら美羅を大切にしてくれるだろうな…」
と、微笑んだ。


「…聖斗」

「それと…
理絵は昨夜の俺の態度見て
安心したみたいだから
もう美羅に変なこと言ったりしないはずだ。

今までホントに悪かった。
理絵のこと許してやってくれるか?」

「うん…
もう気にしてないから…」

「そうか…ありがとな。
で、もう一つ…」

「んっ?」

「好きな男の服着るのはいいが
ボタンくらい、ちゃんとしろよ。
そんな姿見て
俺が発情したらどうすんだ?」

「え゛っ!!」


慌てて肌蹴た胸を隠す私の頭を
クシャクシャと撫でたと思ったら
ほんの一瞬
聖斗の手のひらが
頬を伝い、指先が唇を掠めた。


「あっ…」


久しぶりに直接肌に感じた
聖斗の温もり


嬉しくて、でも切なくて
胸が締め付けられる。


何事も無かった様に
部屋を出て行く聖斗。


あなたに触れられるのは
もう、これが最後なのかな…


時を戻すことは出来ない。
前を向いて生きていくしかない。


そう自分に言い聞かせると
私は服を着て
優斗の部屋へ戻ろうと
廊下に出る。


すると、1階から楽しそうな笑い声が聞こえてきた。


この声は…理絵さん?


「えぇー、そうなんですかー?
お義兄さんも結婚?」


優斗、話したんだ…


伯母さんのテンションの高い声も
ここまで響いてくる。


「優斗と美羅ちゃんが結婚するなんて
夢のようだわー
優斗、よく頑張ったわね!
さすが私の息子だわ」


優斗…褒められてるし…


苦笑いを浮かべ
優斗の部屋に入ろうとした時
1階から私を呼ぶ優斗の声がした。


「みらぁー、ちょっと下りて来いよー」


気分は乗らなかったけど
無視するわけにもいかず
重い足取りで階段を下りる。


階段の下で待ってた優斗に手を引かれ
リビングに入ると
皆の笑顔と祝福の言葉に迎えられた。


でも、私の目は
ただ1人の人物を探してる…


「良かったな。美羅」


聖斗…





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