ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

「周りに反対されながら
必死で俺の命守ってくれた。

そんな想いで生かされた俺が
自分の子供を守れなかったら
バチが当たるよな…」


赤ちゃんを見つめる聖斗の瞳に
迷いは感じられなかった。

決心したんただね…聖斗


理絵さんと、赤ちゃん
3人で生きていくことを…


「でもな、美羅。
俺にとってお前は
大切な存在だってことは
これからもずっと、変わらねぇからな」


不意に触れた聖斗の左手が
私の右手の指を
ギュッっと強く握る。


「ずっと、ずっと…一生、変わらねぇから…」


その優しい眼差しに見つめられると
やっぱり、あなたを渡したくないと思ってしまい
聖斗の無償の愛に包まれた
天使の様な寝顔にまで嫉妬してしまう。


"赤ちゃんよりも、私が大切?"
そんな馬鹿げたことを聞いてしまいそうになり
慌てて口を閉じる。


その言葉を飲み込むと
今度は景色が滲みだし
聖斗の顔が霞んでいく…


泣いちゃダメ…


聖斗に気付かれない様に
さり気なく溢れた涙を拭い
天井を見上げる。


「…それにしても、なんだな。
自分の兄貴と妹が結婚するなんて
変な感じだよな…」

「…あ、そう…かもね」

「これで美羅とは
戸籍上でも兄弟になるワケだ」


しんみりしちゃいけない…
明るく笑わなきゃ…


「そ、そうだよー!!
でも、兄妹じゃないよ。
私は聖斗の姉になるんだから…
これからは
私のこと、お姉さんって呼んでよね」

「はぁ?
なーんか、頼りねぇ姉ちゃんだな」

「もう!バカにしてー」

「アハハハ…」


誰も居ない廊下に
聖斗の笑い声が響き
私も笑顔で聖斗の肩を突っついた。


でも…
私は心の底から笑うことは出来なかったんだ…


あの真実を知ったら
聖斗は、何を思い
どんな行動をとるのか…


それを考えると
無性に怖かった…







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