ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

この一瞬でいいから…

誓いの言葉を言い終えれば
私は現実を受け入れ
優斗の妻として
生涯、優斗を慈しみます。


だから…お願いします
私の、一生に一度の願いを、お聞き下さい…


今、この時、この瞬間
私は聖斗を誰よりも愛し
全身全霊をかけ
彼を心の夫とします。


聖斗に…私のこの愛を…


「誓います」




この時から
私は重い十字架を背負った…


罪と言う名の十字架を…


そして、指輪の交換
薬指にシルバーリングが滑り込み
ベールが上げられると
誓いのキス…


愛する人に見つめられながら
私は偽りのキスを交わす。



・・・



披露宴は、余り大げさにしたくなくて
レストランを借り切って
少人数のアットホームな宴にした。


皆が私たちの席に来て
お祝いの言葉を掛けてくれたけど
聖斗は、とうとう最後まで
私たちの傍には来てくれなかった。


期待はしてなかったけど
やっぱり、寂しい…


そして、その日の深夜便で
5泊6日のスペインへと新婚旅行に旅立つ


旅の途中では
聖斗への想いは封印して
優斗の妻に徹した。


頼もしく、私を優しくエスコートしてくれる優斗
日本から遠く離れた異国で
何度も優斗に抱かれ
愛し合った…


そして、夢の様な日々は
あっと言う間に過ぎ去り
帰国の日


空港で出迎えてくれたのは
伯父さんと伯母さん


開口一番に伯母さんが言った言葉は
「ハネムーンベィビーは期待出来る?」だった。


「もう、伯母さん。
焦り過ぎだよ…
まだ暫くは子供はいいよ」

「あら、残念」


ションボリした伯母さんに呆れながら
新居である
マンションに向かう。


真新しいビルは
独特の匂いがする。
部屋に荷物を運び入れ
一息つくと
伯母さんが、「聖斗たちも呼んでくるわ」
と、慌ただしく部屋を出て行く。


聖斗…
その名前を聞いただけで
妙に緊張している私


でも、戻って来たのは
伯母さんと、瑠菜ちゃんを抱いた理絵さんだけだった。


やっぱり、私のこと避けてるんだ…




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