ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

「そんな…」


それ以上、何も言えなかった。


今まで両親が居なくて
辛い思いは一杯してきた…


でも、両親が居ないということに
世間の目が
こんなに冷たいものだと知ったのは
この時が初めてだったのかもしれない…


自分の全てを
否定された気分だった。


「親なんて関係ねぇーだろ!
居てもウザいだけの親だって居るんだよ!」

「何言ってるの淳君!」


2人の怒鳴り声が響く部屋を
私は飛び出していた…


「待てよ!美羅」


ごめんね…上杉君
私、これ以上耐えられない…


とにかく
この場から逃げ出したかった。


次の日、学校で顔を会わせた上杉君は
とても辛そうな表情をしてた。


「すまなかった…」
その言葉を繰り返し
目を赤くしてた。


上杉君が悪い訳じゃないのに…


無言で食べるお弁当は
美味しくないね…
ねぇ、笑ってよ…上杉君。


いつもみたいに
呆れた顔して
私のことからかってみてよ…


そうしたら、私
ちょっと、スネて
そして笑うから…


そうだ…
今日の卵焼きは凄く上手に焼けたんだよ。
上杉君の好きな
甘い卵焼き…


お願い…食べてみて…


でも、私の心の声は
上杉君には届かなかった…



「俺…教室、戻るよ…」

「えっ?」


今の私たちは
クラスが別々

目を伏せ
教室を出て行く彼の後姿が
なぜか、とても小さく見えた…


「上杉…君…」


食べてはもらえなかった卵焼きの上で
小さな雫が音も無く
静かに弾け飛んだ…










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