ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
浴室から出てきた聖斗は
私の横に座り
「ハァーッ」と、大きなため息をついく。
「ごめんね…聖斗」
私はまだ
聖斗の顔を見ることは出来なかった。
「美羅…なんかあったか?」
「えっ?」
「さっき、泣いてたよな…男…か?」
何も答えられず
黙り込む私に
聖斗は再び聞いてくる
「フられたのか?」
「聖斗…」
「男にフられたくらいで
いちいち落ち込んでんじゃねぇよ」
言葉はキツかったけど
その言い方は
妙に優しかった…
「そうだね…」
本当に久しぶりに
聖斗と素直に話しがてきてる。
不思議な感覚だった。
「ねぇ、聖斗は彼女居るんでしょ。
どんな人?」
私の質問に
聖斗は少し驚いた様に背筋を伸ばす
「彼女なんて居ねぇよ」
「うそ、隠さなくていいよ
同じ大学の人?」
「だから、付き合ってる女は居ない。
でも…好きなヤツは…居るかな…」
聖斗が片思い?
信じらんない…
「聖斗が好きになる人なら
きっと、綺麗な人なんだろうね…」
「ん~…
綺麗ねぇー…
どっちかって言ったら
可愛い系かな…」
聖斗は照れながら
嬉しそうに微笑む
その姿に
なぜか胸がチクリと痛んだ。
聖斗のことは
もうとっくの昔に忘れたはずなのに…
「そろそろ、お湯いいだろ
美羅、入ってこいよ」
「私は後でいいよ。
聖斗も濡れたし
先に入ってきて」
「俺はそんなに濡れてねぇよ。
ヒーターで乾かすからいい」
「そう…」
私はタオルケットを巻きつけたまま
浴室に入り
ドアのノブにそれを引っ掛けると
浴槽に体を沈める。
冷え切った体を気遣い
お湯の温度を低めに設定してある。
聖斗のさり気ない優しさが嬉しかった。
全身の感覚が蘇ってくる…
ぬるく感じ始めたお湯に熱湯を継ぎ足し
ホッとして
とっぷりとお湯に浸かっていると
白い湯気に見え隠れしながら
すりガラスに映る
聖斗の姿が目に留まった。
聖斗…