†Bloody Cross†


彼方は人間を喰う時になると、いつも以上に考えが読めなくなる。

裏一族を束ねる第Ⅱ王族、牙來条家の次期王位継承者……牙來条彼方。

親父は一体何を考えて、わざわざ俺と彼方でここに来させたんだ……??

ほんとにわかんねぇな……。


「ん……」


思考を廻らせていると、ふと呻くような声が耳に届いて少女の存在を思い出した。

俺らがここに来るまでの過程の記憶も彼方が消してったはずから……俺がいる間に目が覚められちゃ厄介だな。


「まだ起きないでくれよ……」


「ん、ふぁ」


そう呟きながら、傷口から溢れた血と共に首筋を舐める。


「やぁ……ん」


「静かにしてろ……」


傷口を舐めあげるたびに甘ったるい嬌声を上げる少女の口を、片手で塞ぐ。


「ふ、ぅ……」


塞いだ手の隙間から、籠もった熱い吐息が零れていく。

俺らヴァンパイアは妖魔でもあるためか、俺らの唾液は人間に媚薬の役割を果たすらしい。

治癒力の高い唾液で牙跡を消そうとすれば、傷口から唾液が入り毎回こうなるわけで――――……






ほんとにめんどくせぇな……


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