記憶 ―砂漠の花―[番外編]


そんな言葉、
使った事はない。


俺じゃない。


でも、
そんな想いで心が溢れてる。

言いたい。
でも、言えない。

…強い、想い。




決まって、
映像が、場面が飛ぶ。



多分、時間は遡っている。

あの花壇の場面より、あの女性の姿が、幼いからだ。


俺は…、
その子と手を繋いでいた。


『みてみて。アイリとおなじ。くろいかみにしたんだ!カッコイイだろ?』


知らない男の子が、
俺たちの前でそう言う。


『アイリ、くろいかみキライだもん!アランもキライ!』


そう言って、
女の子が泣き出した…。


俺は、急に腹が立って、
男の子にこう言った。


『アラン!アイリをいじめるなよ!』



夢の中の俺は、
泣きじゃくる女の子を、
一生懸命慰めて、

小さな手で、
頭を撫でていた…。


ふと、
見上げると、

唇を噛んで、
俺たちを見ている男の子。


俺は、その子を睨んでいた。



オレガ、
マモルンダ…



ワタサナイ…



夢の中の俺は、
いつも、
そう思ってるんだ。



――君たちは、誰…?


< 33 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop