ダンデライオン~春、キミに恋をする~

電話に出るなり、わたしの言葉を遮ってノイズ混じりの大声が鼓膜を叩く。


「沙耶(さや)おはよ……今、S坂」 
『あんたね、のん気に"おはよぉ"…なんて言ってる場合か! 今何時だと思ってんのよ? S坂のどこ? もう始業式始まるよ?』


携帯から飛び出しそうな声に、わたしは思わず顔をしかめる。


「そ、そうなんだけど……、寝坊しまして」

『走ってきな! 先生にはなんとか言っておくから。 わかった? 全速力で走ってよ!』

「さ、沙耶っ……」


言いかけた瞬間、沙耶はさっさと電話を切ってしまった。

わたしは、通話を終えたスマホを見つめてからそれをポケットに突っ込んだ。


「……全速力って……無理だよ」


トボトボと足を進め、ふと顔を上げた。
坂道の途中に小さな公園がある。

そこには、それに見合ったこじんまりしたベンチがふたつ。

ブランコにすべり台があって、そんな公園の真ん中にどうにも不釣合いな噴水がひっそりと存在していた。


この先には、わたしの通ってる学校しかないってのに。
こんなとこに公園があっても、子供が遊んでる姿って見たことないもん。


そんな事を考えながら、ぼんやり眺めていると、公園の中のあるものが目に入った。

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