ダンデライオン~春、キミに恋をする~

・プレゼントに込めた想い



「――んじゃ、みんな気を付けて帰るよーに。明日は遅刻すんなよ」


いつものようにそう言って、ショウちゃんは教室を出て行った。

クラスメイト達は各々に鞄をもって帰って行く。


あたしはその様子をただボーっと眺めていた。




響が学校に来なくなって、3日。

もう、明日は終業式。



電話しても出ないし……。

いったいどこに行っちゃったの?

空席の響の机を見て、唇をキュッと噛み締めた。



「今日も来なかったね、成田君」


そう言ったのは、のんちゃん。

響の席を見て、それから眉を下げて笑った。


ショウちゃんが言ってた。

家の都合で休んでるって。
終業式には来ると思うけど、まだはっきりわからないって。


なにがあったの?

音楽室であの日、ショウちゃんが言ってた

『時間がない』に関係してる?



あたし……響の事なにも知らなかった……。

黙ったままのあたしに、今度はゆっこがにっこり笑った。


「明日はきっと来るよ!そしたら文句くらい言ってやろ?」

「……ま。とりあえず明日で2年も終わりだし、今からどっかよってこ!」


沙耶もゆっこの言葉にうなずいて、「ね?」とあたしを促した。



2年と3年はクラス替えがないから、みんなそんなに気にしてる様子はない。

春休みが終われば、また同じメンツが揃うんだから。



ね、響もそうでしょ?

4月から、また一緒のクラスで過ごせるんだよね?


沙耶達について、のそのそと立ち上がる。

鞄を肩にかけて教室を出たあたしの目に、ある人が飛び込んできた。



あ……。





< 322 / 364 >

この作品をシェア

pagetop