恋人はトップアイドル
こ・・れは、なに・・・?今、なにが・・・。

まるで、デジャヴュに陥ったような感覚。
二度目の、輝からの抱擁。

その力強さが、あたしをおかしくさせる。

「・・まだ、わかんねえか?」

耳元で、輝がそう囁いた。

なんでだろう、涙が出そうだよ。

「・・・勘違い、したくない。」

隠せなくて、声が震えた。

輝がふっと笑ったのが、なぜだかわかった。

「勘違いなんかすんな。お前、頭いいんだから。間違いになんか、すんじゃねえ。」

抱きしめる力が、また強くなる。

輝の胸が温かい。

「・・本当は多分、ずっとこうしたかった。お前は、スタッフで、俺は・・芸能人で、だからこんなことにはならねえって思ってたけど・・・。無理。」

「・・・な、なんで・・。」

あたしなんか・・・。

「女に興味なんか、今までなかったんだよ。お前が初めてなんだ。俺が、こんな気持ちになんのは。」

その返事に、我慢しきれずに、涙がこぼれた。

望んでなんかなかったはずなのに・・。
ただの憧れだったはずなのに。

なのに、幸せで、涙が溢れる。

「どうして?とか、聞くなよ。俺にもわかんねえ。でも・・、お前は特別なんだ。俺に知らない感情ばっかり寄越すし。」

「・・そ、そう言うなら、輝だってそうだよ・・。」

涙混じりでそう返したら、

「・・そうか。」

って、輝が優しく笑った気がした。

「・・輝、一個、頼んでもいい?」

「ん?」

「ちゃんと・・、言ってほしい。」

あたしはそう言って、輝のスウェットをギュッと掴んだ。


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