恋人はトップアイドル
「あれぐらいで怪我するほどヤワじゃないから平気よ。心配しないで。」

そう言って、私はモニターの方へ向かう。

「監督、どうでした?」

「ああユキ!よかったよ!今の演技最高!さすがだね。本番で力を発揮するとはなー。」

「ありがとうございます。」


私は今、次のクールで放送されるドラマの第2話の撮影中。

もちろんヒロインを演じる。ライバル役は同じ事務所の1年下の後輩の南。最近メキメキと力をつけてきていて、映画やドラマにも引っ張りだこだ。今んとこはまだ可愛い後輩をやってくれているみたいだけど、いつ豹変するかわからない。

今のうちに、潰しておかなきゃいけないかしら。

頭の片隅で、そんなことを考えた。


今演ったのは第2話のとあるシーン。
監督の反応を見る限り、オーケーみたいだ。


「はい、オッケーです!じゃあ南ちゃんは今日はもう終わりね。お疲れー。」

「あ、ありがとうございました!お先に失礼します!」


思った通り、監督のオーケーが出た。このシーンで今日は撮影が終わりな南は、スタッフや監督、私に頭を下げながら、スタジオを出ていった。


「ユキは、今からケンゴのシーンだから、その間待ちね。」

「わかりました。」


ケンゴは、このドラマの男の主人公。つまり、私の相手役の役名。

この業界にいれば、ドラマ一話撮るにも1週間以上かかるのは普通で、1日に例えば2シーンだけの撮影だとしても、その間に結構な待ち時間があるのも普通のこと。

何本もドラマや映画を抱えることに慣れた私は、その待ち時間を、他の作品の台本読みや、役の台詞覚えに当てている。


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