恋人はトップアイドル
輝が違う。

他の人への態度が柔らかくなった。
私への態度は、もっと冷たくなった。


あの子に対しての態度は・・、

言葉遣いこそ変わらなかったけど、目が違う。


目が、あの子を・・。


「・・諦め、られない。」

「・・・ユキ。」

一気に胸に溢れた嫌な感情に、身を任せるように言った。

「あの子より、私の方が輝のことずっと見てきたもの。外見だって、私の方が断然上でしょ?今だけよ。輝があんな風になってんのは。」

「ユキ!」

ケイの大きめな声が、私をたしなめる。

「・・ユキ、輝は本気だぞ。」

止まった私を見て、ケイが冷静に言い切る。


・・やめてよ。


「輝は、あの子を諦めない。きっと。マジであいつが好きなら、今のうちに引いたほうがお前のためだ。」


・・今のうちに?引く?

思わず、的外れな意見に笑みがこぼれた。


「・・無理よ、そんなの。もう、手遅れ。」

「ユキ・・。」

「ケイ、私は諦めないから。絶対に、輝だけは、渡さない。」


私は今日初めて、ケイの目をしっかりと見据えて、そう言った。

ケイの瞳が、揺れた気がした。
でも、もう止められない。



私にだって、プライドがある。

輝を誰よりも想ってきた、自負がある。


だから、ただの一般人、しかもあんな平凡な子に・・。


「絶対に、渡さない。」


もう一度、小さな声で、私は自分に誓うように、そう呟いた。


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