恋人はトップアイドル
君って・・・?・・まさか。

「あたしを、ですか?」

先生に言われたことの意味を、一瞬飲み込めなかった。

「そうだ。生徒代表としてね。進学校の生徒会長はどんな人物なのかと、映すことを強く希望している。」

すごーいっ。
いいなあ、会長。

先生の話を聞いていた、女子たちの羨望の声を、遠くに感じた。

でもそんなの・・、そんなの、

「できません。」

「いやしかし、」

「なんでー?笹本さん、映れるチャンスだよ?」
「てかRと会えるんだよ?すごいじゃん!」
「やったほうがいいってー!」

先生の言葉を遮って、委員たちや役員の女子たちが声を出す。

もう会ってるから困るんじゃない・・!!


って、そんなこと言えるはずもない。

100%譲って取材は受けても、あたしとRが鉢合わせることだけは避けたい。
それだけはなにがあっても、駄目だ。

そんなギリギリのあたしの願いとは裏腹に、最悪の宣告は下された。

「私としては、今回は受けようかと思う。校長も学園長も、今回はどうやら乗り気なようだ。」

その瞬間、会議室が湧き上がった。
でもあたしは、頭がクラクラするのを感じていた。

まさかこんなことになるなんて・・。

校長と学園長を引き合いに出されたら、もうなにも言えない。これは暗黙の命令だ。


もう、決定は下されてしまった。この先どうするかは、自分で考えるしかないってことだ。


「笹本くん、そういうことだから。後日、君にはまた校長から詳しい話があるかと思うが。」

「・・はい、わかりました。」

教頭の浮き立った声に、無理矢理笑顔を作った。でも多分、引き攣っていただろう。

だってどうしたって、このピンチを切り抜けられる気がしない。


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