恋人はトップアイドル
『・・お前、なんかあったのか?』

唐突に、ケイが真剣な声になった。

『今日、輝と最後のシーンだったろ。輝となんかあったか?』

ケイがわざと明るくそう聞いているのがわかった。
ケイはいつもそうだ。
あたしが悩んでたり、滅入ってたりすると、なぜか電話やメールが届く。さりげない優しさで、あたしの気分を変えてくれる。

だから、あたしはケイを信用していた。人付き合いが苦手なあたしも、ケイだけは、自分なりに大切にしているつもりだ。


「・・、あんた本当、エスパーよね。」

『まあな。』

あたしの言葉に、ふふんと笑ったような声で返事が返ってきた。

「輝に、泣きついたわ。」

『・・・は?』

「泣きついて、告白して、・・抱き着いて、諦めない宣言した。まあ泣きついたのは若干演技だったけど。」

『おいおいおい・・、やること大胆だな。』

ケイが苦笑混じりにそういった。

「だって・・・。」

『・・だって?』

ケイが続きを促す。

「だって、聞いちゃったのよ。この間・・・、撮り終えて、楽屋行ったら、輝が話してるの。」

『誰と?』

「決まってんでしょ、あの子よ!」

ケイのすっとぼけた返事に、イラッとして声を荒げた。

『あー優美ちゃんか。』

ケイは納得がいったとでもいうように、そう返した。

「・・・なんでよ。あたしがここまでしてんのに・・・。どうしてよ・・!」

髪の毛を掴む。悔しくて、苦しくて、唇をかんだ。

『・・・ユキ、だからいったろ?輝は、お前にはなびかない。諦めろ。・・じゃなきゃお前が壊れるぞ。』

・・・あたしが、壊れる・・?

そんなの。


「・・そんなの、もうとっくに壊れてるわよ・・。」

あたしを見てはくれないと、知った時から。


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