恋人はトップアイドル
『・・ユキ、なら尚更、もうやめとけ。輝はあの子を選んだんだ。お前じゃない。』

「・・どうして?・・・だって、あたし・・。だって・・。」

今度は演技じゃない。
本当に、声が震えた。


ただ、欲しいだけ。輝が。
ただ、側にいたいだけ。輝の。

なのにどうして、かなわないの。

そのために、綺麗になる努力も、仕事も、人一倍頑張ったのに。


・・ずいぶん、昔。
輝が言ってくれた、あの言葉。

『・・お前、強いな。そういう女、好きだぜ。』


あの言葉があったから、あたしはここまでやってきた。
もう一度言ってほしくて。

頑張ったのに・・・。


『ユキ・・、輝も、苦しんでる。仲間として、尊敬するお前を、突っぱねなきゃならないことを。・・だから、輝を想うなら・・』

「嫌よ。」

ケイの冷静な声を、遮った。

「・・離れろって言うんでしょ?そんなの、できるはずない。絶対に無理よ。」

『・・ユキ!』

ケイのもどかしそうな声が、胸に響いた。

「・・・もう、戻れないのよケイ。」

『ユキ・・・?』

「あたし、戻れない。輝と出会う、前の自分に。だから・・。」

『・・お前には、俺がいんだろうが!』

突然、ケイが叫んだ。
びっくりして、あたしは言葉をなくす。

『・・たく、こんなことまで言わせんなよ!・・輝がいなくたって、俺はいんだろ?お前の側に、いつもいたろ?』

「・・・な、に言って。」

動揺して、うまく言葉が回らない。ケイの言葉は、まるで・・・。

『ユキ、俺を見ろよ。』

ケイの真剣な声が、耳元で響いた。

『輝じゃなくて、俺を。お前を幸せにできんのは、俺だよ。』

「・・・・わ、かんない。そんなの・・・。」

あまりの動揺に、声が震えて、そのまま電話を切った。

ケイが・・あたしを・・。

目をつむる。ケイの笑顔が受かんで、だけどそれはすぐ消えて、輝の残像に変わった。


もう、戻れないんだよ、ケイ。
輝と出会ったあの瞬間から。


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