恋人はトップアイドル
『優美ちゃん、ある程度覚悟は必要だよ。でも、輝を信じていれば大丈夫だから。』

それは気休めのようにも聞こえた。でも、輝を信じる、それだけは誰にも負けない自信があった。

「・・はい。」

『じゃあ、明後日、迎えに行くからね。』

堂本さんはそう言って、電話を切った。

受話器を置くと、身体全体がぶるっと震えた。なぜだろう、やっぱり、不安だった。でもなにが不安なのかが、思い当たる節がありすぎて、わからなかった。
両手でしっかりと、自分の身体を抱きしめた。


大丈夫・・。大丈夫・・・。


そう、呟いた。










そして今、あたしは予定を狂うことなく、事務所の社長室の、だだっ広い部屋の真ん中にあるソファーに座っていた。

部屋の中にはあたし一人で、誰もいない。

ソファーの前にはローテーブル、その前にまたソファーが対面して置いてあり、その向こうに、いかにも社長しか座れなさそうな、大きな机と、大きな一人用の黒革のソファーがあった。

ドアは、ソファーの後方にあるから、いつ社長が来るのか、いや違う誰かが来るのかな?、とにかくわからない。

それもまた、緊張感を高めた。


その時だった。


バタバタバタ・・

そんな慌ただしい音が聞こえ、止まった。

・・・なんだろう?

微かな話し声が聞こえる。でもそれが誰のものなのか、わからない。

すると、社長室のドアがゆっくりと開く音が聞こえた。
あたしは怖くて、後ろを振り向けない。

「・・・ってろよ。」

・・・あれ?

ドアが開いたことで、後ろから微かに聞こえた声が、輝に似ているような気がした。

思わず、後ろに目をやる。

「優美・・。」

ドアがちょうどパタンと閉まった。やっぱりそこには、何日かぶりに会う、輝の姿があった。

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