恋人はトップアイドル
数え切れないほどの思い出の最後は、たった一枚の紙切れだった。

あのだだっ広い家の、広いリビングの机の上に置かれた手紙。

最後の一行だけを信じて、俺はあいつを待ち続けてる。

あいつは見た目よりも強情な女で、だから俺にだって簡単に弱音なんかはかない。
そんなことはわかってる。

だから今回も、無理にでも探しだせば、なんてことはないんだ。きっと。

だけど、そんなことはあいつはきっと・・望まないから。

それにあいつは、いつも俺を見てくれている。
必ずどこかで。

そんな気がするんだ。


だって言ったじゃねえか。


俺にしか興味がないって。
俺の一番のファンなんだと。


本当は声がききてえよ。
こっちは写真の一枚すらもない。

でもだからこそ、
俺は俺の立場を最大限に使ってやる。

明日から始まる、約2年ぶりの全国ツアー。

俺はそこに全てをかけるよ。
たとえ今は、お前に届かなくても。


いずれはきっと、届くだろう。


だから今は、

この気持ちも全部、全部、力に変える。




そしていつか、お前が俺の所へ戻ってきたのなら、


その時は、


お前を攫いに行くから。




そしたらもう、



離さねえんだ。




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